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2015.06.16

アリタポーセリンラボの日常

有田焼の原料はどこから?~天草に行ってきました!~

有田焼の原料はどこからきているかご存知ですか?
今回は有田焼の主原料である陶石をご紹介しますね。

400年ほど前に朝鮮陶工の李参平が有田で陶石を見つけたんだよね?
だったら今でも有田町内で調達できる?


有田町内にある泉山磁石場

 

海外から?
時期で有名な景徳鎮やチェコ、ニュージーランドにもカオリン土などの陶石の成分産地はあります。
マイセンとかヘレンドはチェコやドイツのカオリン土と長石などを混ぜ合わせて自社に最適な粘土を作っています。

 

有田の場合は陶石は熊本県天草市から来ています。

 

150年ほど前までは天草陶石と泉山陶石を混ぜたものを使ったりしているところもありましたが、
保守的な人たちからは泉山の磁石を使っていないものは有田焼とは認めないという意見もありました。
しかし、明治35年(1902年)から品評会(九州山口陶磁展の前身)でも泉山陶石以外の陶石で作られたものでも
出品可能になったそうです。

 

現在はカオリンを多く含む天草陶石が使用されています。
天草陶石は粘りがあり、また鉄分やチタンの含有量が少ないためとても白く焼き上がるそうです。
(一部作家さんなどが今でも泉山陶石を使っていらっしゃいます。)

 

そんなこともあり、私は一度どうしても、天草の磁石場を見てみたかった。
私たちが使っている陶石はどんなところで採掘されているのかを見たかったんです。
たまたま、他の窯元の方が天草の磁石場を見学に行かれるというので、私も同行させていただきました。

 

有田から天草までは船で行きます。
鹿島市を通り、あの有名な「ギロチン」と言われる有明海潮受け堤防の上にある道路を取って長崎県の島原に行きました。
島原から天草までフェリーが出てるんですよ。

 

フェリーから撮った海。これしか写真撮っていないというのが何ともかんとも(笑)

天草に渡ってからはとってもいい景色です。

天草にある陶石やさんで一番有名なのが「上田陶石合資会社」
上田陶石合資会社さんは焼き物も焼いてらっしゃいます。
さすがに陶石やさんの焼物、とっても地肌がきれいでした。

そして上田家史料館が敷地内にありました。

天草の陶石は1662年に平戸藩窯の今村弥次兵衛が初めてつかったと言われています。
それまでは包丁を研ぐ「砥石」として使われていたそうです。
今でもホームセンターなどで砥石のコーナーに行くと天草砥石が販売されていますよ。

この文様は高浜焼の代表的なものだそうです。

海松紋【みるもん】
さすがに海の近くだけあって海藻の文様ですね。モダンな感じもして可愛いですね。

 

説明文を読んでいると面白いことが書かれていました。
「高浜焼が売れず、有田焼ばかり売れている。有田焼の原料は天草陶石だから有田には陶石を売らないようにしよう」
というような記録も残っているそうです。

 

とは言え、高浜焼の品質向上のため平戸藩三川内や長崎の亀山から職人を呼んだり苦労されたようです。
それも何より天草の人々のため。
天草の人々の職を作り出すために庄屋でもあった第7代上田源太夫宜珍が私財をなげうってでも産業を興したんだそうです。

 

しかし、高浜焼は12代が閉窯し、陶石の採掘販売に専業していた時期もあったようです。

 

有田以外の焼物産地の歴史を知る機会はあまりないのでとても衝撃を受けました。
それとともに有田焼の影響力の高さにも驚き、いまの有田の現状と重ね合わせ
「人々に憧れられる有田焼なのか?高い技術は保持できているのか?」
と振り返った次第です。

 

ARITA PORCELAIN LABの粘土もたどっていけば、この上田陶石から来ているようです。

 

というわけで、採掘現場に行こうとしたのですが・・・。

 

有田の人は磁石場はすぐ身近にあります。
町中にあって、磁石場のすぐそばまで家が建っていたり、陶器市の通りもすぐそばです。
なので、天草の磁石場も甘く見ていました。
すぐにつけるのだろうと。

 

田んぼを抜け、山に入りました。
細い道を通り、ようやくあったのが、磁石の選別場。
この奥に磁石場があるに違いない!
その前に古窯跡も見ておこう!

 

奥には登り窯跡がありました。

5連くらい繋がっていました。
足場が悪くて写真撮るのが精いっぱいで数えていませんでした(汗)

 

こんな山の中で焼いていたんだと思うと、運搬とか大変だっただろうなと。
単純にそう思いました。

 

さぁ、登り窯も見たし、磁石場へGO!

 

途中から道の舗装がなくなり、でこぼこ道。
でもトラックが通ったような跡はあります。
トラックが通っているのであれば、間違いない!
そう信じて30分。
着きました!

 

ハイ!
山が削られて、茶色い地肌が見えています。
まるでショッカーが出てきそうです。

 

あまりのショックに写真も撮り忘れていましたが、どうもここ、磁石場じゃないようです。
陶石ではない他の土の採掘現場のようでした。

 

フェリーの時間もあったので、改めて磁石場を探すこともできずに、先ほど通った選別場に寄りました。
ここでも衝撃の事実が!


おばあちゃんが石を手作業で選別しているんです!

 

天草は有田と違って陶石が帯状に堆積しているそうです。
地層をイメージして下さい。バームクーヘンのように地層が折り重なっているそうです。
有田の場合は山一つが陶石。

今は昔のように陶石の塊(岩)での採掘がなくなっているそうです。

昔は捨てていたような小さな石を選別して陶土にしているとのこと。
その選別をおばあちゃんがしていました。

 

なんだか、涙が出てきました。
私たちは粘土になったものしか見たことがなかったのですが、その原料は手作業で選別しているのかと。
本当にここは日本で、2015年なのかと!

 

有田焼の現場を見学して頂いた方は
「こんなに手作業とは思わなかった。」
とおっしゃいます。

 

私も同じ気持ちでした。
「陶石を選別するのにまさか手作業だったとは。」

 

天草陶石はとりやすいところの多くは採掘が終わっているそうです。
今後は山の木を切り、堆積している土を取り除いた後、よりよい陶石を採掘しなければならないそうです。
採掘するまでに山を切り開くためにかかる費用は・・・・
とてつもない金額がかかるとのこと。
すぐにはできないそうです。

 

もうすぐ、陶石の値段が上がります。
選別場を見ればそれも仕方ないのかな~と思う反面、なかなか製品に転嫁できないこともあります。

 

工場内手工業である有田焼。
原料も手作業での選別。
有田焼を手に取られた方々は大切に使って下さいね。

 

「割れないと新しいものが売れない」
と冗談のように言いますが、作り手からすると割れるのは哀しいです。
大切に使って頂いてこそ、愛着も湧きます。
割れたら困るからなおしておく、飾っておくではなく、大切に使っていただくことが一番嬉しいことです。

 

これからもARITA PORCELAIN LABをよろしくお願いしますね。

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創業1804年 200年の伝統技術を活かしたラグジュアリーモダンな「有田焼」
アリタポーセリンラボは、創業200年以上の歴史を誇る有田焼老舗窯元 七代目弥左ヱ門が生み出した
現代のライフスタイルに合わせたラグジュアリーモダンな有田焼です。
熟練職人が弥左ヱ門窯ならではの門外不出の技術を活かし、数え切れない試作を繰り返し進化した釉薬・技術を使い、
一つ一つ手仕事で、モダンな有田焼を作りだしています。